転職活動中、面接の場で必ず聞かれるのが「転職理由」です。
しかし「現職の残業が多過ぎる」、「ハラスメントを受けた」など、転職理由はネガティブなものが多くなりがちです。
転職理由の伝え方を間違えると面接官の印象が悪くなり、不採用の可能性が高まります。
しかし、事前に準備をすれば逆にプラスの印象を与えることも可能です。
この記事では①転職理由を整理する方法、②面接における転職理由の伝え方 、これら2つをお伝えします。
この記事は下記のような方におすすめです。
- 転職理由の例文が知りたい
- ネガティブな転職理由を上手く伝えたい
- 面接官が腹落ちする転職理由が思いつかない
この記事を読めば面接官が納得する転職理由を準備でき、面接通過率が高まります。
面接は事前準備が勝負を分けると言っても過言ではありません。
ぜひ時間をかけてしっかり準備し、内定を勝ち取りましょう。
なぜ企業は転職・退職理由を聞くのか
企業が「転職・退職理由」を応募者に聞く理由を列挙します。
- 入社後、同じ理由で再び退職(短期離職)しないか
- 転職理由が妥当か
- 自社にマッチしているか
1つずつ解説します。
入社後、同じ理由で再び退職しないか
企業は人を採用するたびにコストがかかります。
そのため「入社した人には短期で退職せず長く働いてほしい」と考えるのが普通です。
例えばあなたの退職理由が「現職の人間関係が悪いこと」だと仮定しましょう。
そして応募先との面接で退職理由を伝え、面接官が「人間関係は相性もあるし一番保証出来ないな・・・。この人は採用してもすぐ辞めちゃうかも。」と感じたら、採用の可能性は下がります。
※上記では例として「人間関係」を挙げましたが、一口に人間関係と言っても、面接官に納得されるかは程度によります。
例えば「オフィスで毎日暴言が飛び交っていた」など、「それは誰でも辞めるよね」と感じるレベルであれば、まともな企業の面接官は納得してくれるはずです。
転職理由が妥当か
転職理由を聞くことで、企業は以下のポイントを見極めようとしています。
- 現職で改善する努力をしたのか
- 個人の努力ではどうにもならない理由か
例えばあなたの転職理由が「上司がしっかり指示をしてくれない(これをそのまま伝えたら、高確率でネガティブなツッコミが入ります)」だとしましょう。
あなたがこれを伝えたら、多くの面接官は下記のようにマイナスイメージを持つでしょう。
- 「自分から上司に指示を仰いだりしなかったのかな」
- 「基本的に受け身なのかな」
マイナスイメージを持たれる理由はシンプルで、「あなた自身の努力で改善出来るのでは?」と感じさせる転職理由だからです。
自社にマッチしているか
企業はあなたに転職理由を聞くことで、性格や人柄、仕事へのモチベーションを知ることが出来ます。
例えばあなたの退職理由が「業務改善の提案が不当な理由で却下されることが多く、風通しの良い環境で働きたいから」だとします。
この場合も恐らく「具体的にどんな提案をしたのか、提案の仕方はどうだったか」など深堀りされるでしょう。
しかしここで筋道立てて説明できれば、業務効率を重視している企業からは、
「この人は効率を大切にしているんだな。自分から積極的に動いているし、うちに合っているかも。」
と感じてもらえる可能性が高いです。
転職理由の構成
転職理由には基本構成があります。それは下記の通りです。
- 私は仕事でこんなことを叶えたい・こんな働き方がしたい
- 現職でそのための努力をしたが、限界を感じた or 叶わない
①→②のストーリーで「このような改善努力をしました。しかし限界でした。」と話を進めることが重要です。
転職理由を整理するステップ
転職・退職理由が整理出来ない方は、下記の順番で思考を整理しましょう。
- 現職での不満点を洗い出す
- ①の中で、自分の努力で改善できる不満は消す
- ②で残った不満の中で、一番大きな不満は何か考える
- ③で選んだ不満点がどう改善されれば良いのか考える
上記ステップついて解説します。
尚、このステップ大事なのは「自分ではどうしようもない一番の不満点」を見つけ、「それを今後どう改善したいか」の整理が出来ればOKです。
これらが整理出来れば、上記のステップでなくとも問題ないです。
①は簡単です。普段働いていて、「この会社のここが嫌なんだよなぁ」と感じることを列挙しましょう。
次に②です。
前述にもありますが、自分の努力で改善出来る不満を転職理由として伝えても、
「自助努力できない人なのかな・・・」
と思われるだけです。
従って、自分の努力で改善できることは消しましょう。
③と④も簡単です。③の不満が「あなたのネガティブな転職理由」になり、④が「③をポジティブに変換した転職理由」に繋がります。
転職理由は④のポジティブな形で伝えるのが定石です。
転職理由を整理するときのポイント
転職理由を整理するときは、下記のポイントを押さえましょう。
- 転職理由と志望理由とを混同しない
- 志望理由との一貫性を持たせる
- 転職理由を自分自身で深堀りし、具体性を持たせる
- 愚痴っぽくならないようにする
- ポジティブに伝える
全てに共通することですが、「質問の意図を汲んで、相手が求めている情報を伝える」ことが大事です。
転職理由と志望理由とを混同しない
転職の面接でやってしまいがちなのが、「転職理由」と「志望理由」とを混同することです。
これは本当に多いので気を付けましょう。私もやっていました(汗)。
面接本番で「転職理由を聞かれているのに志望動機まで喋ってしまった」ということにならないよう、事前準備でしっかりと区別しておきましょう。
志望理由との一貫性を持たせる
転職理由と志望理由は別物であり、これらは地続きである必要があります。
下記に例を挙げます。
- 転職理由:「残業時間を減らしたい」 → 志望理由:「御社は長時間労働に依存せず、効率良く働けると感じたから」
- 転職理由:「給与が少ない」 → 志望理由:「御社は成績に応じてインセンティブがあり、高いモチベーションで努力できると感じたから」
上記のように、転職理由と志望理由との間には、
「現職には○○がないけど私は○○を求めている(←これが転職理由)
↓
御社には○○があると感じた。私は××で貢献したい(←これが志望理由)」
という一貫性が必要です。
「なぜ?」の繰返しで転職理由を深堀りし、具体性を持たせる
転職理由を整理するときは「なぜ?」を繰り返すことで転職理由を自身で深堀りし、具体性を持たせることが必要です。
理由としては、転職理由が浅い(具体性がない)場合、面接官に以下のような印象を与えることになるからです。
- なんとなく転職したがっているのかな
- 重要な決断でも深く考えない人なのかな → 仕事でも同じことをするかも・・・?
転職というのはかなり重要な決断ですよね。上記のような印象を面接官に与えた場合、内定をもらうのは難しいです。
例えばあなたの転職理由が「スキルアップしたい」というものだと仮定しましょう。
面接でこの理由をそのまま伝えるだけだと、ほぼ100%採用は見送られます。
この「スキルアップしたい」を以下のように深堀りするのが大事です。
- スキルアップしたい ←なぜスキルアップしたい?
- 今のスキルではマネージャーなどになれない ←なぜマネージャーになりたい?
- チームの先頭に立って人をリードすることが好きだから ←なぜ好きなのか?
- 学生時代に部活で部長を経験した。そのときにメンバーをリードして目標達成に向かうことにやりがいを感じた。この経験を通して、自分が主体性を一番発揮して楽しめる立ち位置がリーダーだと感じたから
愚痴っぽくならないようにする
転職理由が愚痴っぽくなると、面接官目線では
- 「それはこちらに関係ない(正直どうでもいい)んだけどな・・・」
- 「他責思考が多いのかな」
と思われてしまうだけです。
次の項にも繋がりますが、多くの人はいつもネガティブな人とは働きたくないものです。
これは転職に限った話ではなく、いつもネガティブな人とは友達にもなりたくないですよね・・・。
※補足ですが、「いつも愚痴や文句ばかり言っている人」というのは、本人が気付いていない or 隠せているつもりでも、話し方や言葉によって周りに伝わるものです。もしあなたに愚痴や文句の習慣があるのであれば、これをチャンスと捉えて改善されることをお勧めします。
ポジティブに伝える
当たり前ですが、面接官はあなたの不幸に同情したくて面接しているわけではありませんよね。
ざっくりお伝えすると「一緒に働きたいと思えるか」。
この判断材料を得るため、企業は面接してくれるわけです。
ということであれば、どんな伝え方が良いかは明らかです。
ネガティブな人より、ポジティブな思考や伝え方をする人の方が「一緒に働きたい」と感じられますよね。
転職理由の例文
次に理由別の転職理由の例文を紹介します。
下記のポイントを覚えておけば、面接中にも芯がブレることなく受け答え出来ます。
- 他責に聞こえる伝え方だけはしない
- 話に具体性を持たせる(数字で示せるとベター)
- ポジティブに伝える
1.ハラスメントが原因の場合
※1つの質問に対して下記の例を一気に伝える必要はありません。例えば初めは★部分だけを伝え、深堀りされたら具体的に伝えるくらいで丁度良いです。
一気にすべて喋ると、面接官も「いつまで喋るんだろう」と飽きてしまいます。
—————-
★「私は心理的に安全な環境で仕事に集中したいと思い、退職を選択しました。
★前職は「問題が発生したら担当者一人の責任」という考え方が定着していました。
私が仕事でミスをしてしまった時、その時から上司に「使えない」、「無能」などと言われるようになり、精神的に追い詰められてしまいました。
本人が努力することは勿論必要なことです。
しかし、問題発生時に担当者だけの責任とする文化より互いにフォローする環境の方が、余計なことを考えずに集中できると私は考えております。
★転職後は、チームワークを大事にしている環境で仕事に集中したいと考えております。」
「ハラスメント」という言葉を安易に直接出すのはお勧めできません。
理由は、ハラスメントを受けた側が「ハラスメント」と言うと、「私は被害者なんです」というニュアンスで伝わりやすいからです。
※あなたにその意図が無くても、面接官にはネガティブな印象を与える可能性があります。
ハラスメントが実際にあったとしても、面接官が求めているのはハラスメントに対する対処や捉え方、これからどう働きたいか、の部分です。
2.残業時間が理由の場合
残業時間が多く、健康管理が困難になったため退職しました。
前職では毎月の残業時間が60時間を超えており、生活リズムを乱しておりました。
状況改善のため、できる限り丁寧に根拠を用意した上で、上司に業務効率化の提案を行いました。
しかし「仕事の進め方を変えるつもりはない」という旨の回答をいただき、現在の環境で私個人が出来ることに限界を感じました。
そこで、効率良く業務を行える環境で、最低限健康は維持した上で働きたいと考え、退職を決意しました。
残業時間が理由の場合、シンプルに数字を伝えれば理解してもらえます。
今の時代、「残業してナンボだよね」という価値観は古いです(価値観は人それぞれですが)。自分がどう働きたいのかをハッキリ伝えましょう。
前職で残業時間を減らす努力をしたのであれば、その事実も伝えましょう。
3.体調不良が理由の場合
結論から申しますと、体調不良が転職理由です。
前職では長時間勤務が原因で病欠することが多くなり、パフォーマンスを維持することが困難になりました。
私はこの経験から、健康という土台があって、初めて仕事に集中できるのだと痛感じました。
これからはしっかりと健康管理をした上で仕事に集中したいと考えております。
深掘りされた場合でも、他責にせず事実を伝えれば「この人は正当な理由で転職するんだな」と理解してもらえます。
4.給料が少ないことが理由の場合
給与が少ないことが転職理由の場合、ストレートに伝えると印象が悪くなる可能性があります。
理由は「給与が理由で転職する人は、もっと高給の企業に誘われたら辞める可能性が高いから」です。
給与によっぽど自信がある企業でなければ「しばらくしたらまた辞めてしまうのでは?」と捉えられるのが自然な流れです。
また「お金最優先の人」と判断されると、「それ以外のことは優先度が低いのかな」という印象が付く可能性もあります(勿論お金は大事です)。
しかし職種によっては、この理由がポジティブに捉えられることもあります。
何故かというと、高い報酬を求め、且つ成果と報酬の連動性がある仕事をしている人は、ガッツリ働いて成果を残してくれる傾向にあるからです。
営業職はその代表格です。営業職であれば、企業によっては期待値が大きくなり、内定に近づくことが出来ます。以下は例文です。
現職では毎年、個人目標の120%以上を達成しております。
よって、ある程度自身の役割を果たせているのではないかと私の中では考えております。
上司にも、成果自体は高く評価していただいております。
しかし会社の制度的に、報酬は成果の有無に関わらず一定という状態です。
私の性格的に、成果を目に見える形で評価いただける環境の方が、より成果に対して貪欲になれると考え、転職を決断しました。
ここでも抑えるポイントは以下の通りです。
- 状況を具体的に答える
- 自分では改善しきれない要因を示す(会社の制度など)
- 最後はポジティブに変換して伝える
5.スキルアップ目的の場合
スキルアップが転職理由の場合、以下のポイントを押さえましょう。
- スキルアップしたい理由を含める
- 現職の環境では自分の希望するスキルアップに不十分であることを具体的に伝える
- 具体的にどのようなスキルを身に付けたいのか
- スキルアップのためにどんな努力をしているのか
- 会社頼みではなく、自分の力でスキルアップする意欲を伝える
スキルアップというと一見ポジティブな理由ですが、伝え方を間違えると、
- 結局あなたはどうなりたいのですか?
- 会社を学校と勘違いしていませんか?
とツッコまれることになります。
伝える内容をしっかり整理していないと、逆に印象を悪くしてしまいます。注意しましょう。
例文は以下の通りです。
現在は営業職をしておりますが、決まった顧客からの受注が殆どで、仕事がルーチン化しつつあります。
仕事の中で新しいことが出来ないかを模索していますが、新しいことに手を出す姿勢は受け入れられないのが現状です。
今後は自分で考え、新しいことにチャレンジし続けられる環境で付加価値を高めたいと考えています。
↓
質問で深堀りされたら、具体的に何をしているか等を答えていく
6.結婚が理由の場合
私の経験上、結婚という理由は隠さずに伝えて問題ありません。
結局企業が見ているのは「貢献してくれそうか(能力)、一緒に働きたいか(人柄)」だからです。
従って、結婚という理由+αで働く意欲をアピールできると良いです。
以下は例文です。
結婚に伴い、配偶者の居住地に移住することになりました。これまでの職場から通勤が困難となるため、転職を選択しました。
今後は現職の経験を生かして貢献できる会社で、腰を据えて働きたいと考えています。
結婚を転職理由として伝える場合、以下のことに気を付けましょう。
- 長く働きたい意思を伝える(企業は当然長く働いてほしいため)
- 入社後、活躍したい意思を伝える(転職先のメリットも考えていることが伝わる)
繰返しですが、「結婚したいから」だけではなく、「転職先ではどう働きたいか」「転職先で活躍したい意欲はあるか」なども伝えると、面接官は「ちゃんと働くモチベーションのある人だな」と感じ、好印象です。
まとめ
転職理由の伝え方として以下の内容はNGです。
- ネガティブ(愚痴っぽい)
- 他責思考
- 給与の不満(ただし一部例外)
- 志望理由と混同している
そして転職理由には以下の要素を織り込むことが大事です。
- 前向きな理由
- 具体性がある
- 同じ理由で再び退職しない
- 志望理由と一貫性がある
最後に、転職理由が整理できないときは転職エージェントに頼ることも非常に有効です。
転職活動は一人で進めると視野が狭くなりがちです。
しかし転職エージェントを活用すれば、自分にはない視点からのアドバイスも沢山もらえます。
転職エージェントを有効活用し、転職を成功させましょう。